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2002年8月 第25話  素麺と冷麦

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夏の本番となり冷麺を欲する頃となりました。はっきり区別しがたいこの二つは、
どちらも小麦粉を麺に加工した物ですが、本来はその製法上で大きな違いがございます。

「そうめん」はは、小麦粉を食塩水でこねてから、油を表面に塗り、手で細く延ばして作る、手延べ麺です。
これに対し
「ひやむぎ」は、小麦粉を食塩水でこねるところまでは同じですが、
麺状にする段階でうどんと同じように麺棒を使って薄く延ばしてから包丁で切る、手打ち麺であります。

うどんとひやむぎの製法が似ているのは、
この二つが鎌倉時代に中国から伝えられたとされる「切り麦」を起源とするためと言われています。
当時は茹でてから冷やして食べるものを
「ひやむぎ」温めて食べるものを「あつむぎ」或いは「うどん」と呼んでいたそうで、違う麺類として扱われています。

 さて、そうめんとひやむぎの区別がはっきりしなくなってきたのは、明治時代に製麺機が発明され、
機械打ちの物が出まわるようになってからのことです。
さらに最近では乾燥技術が格段に進歩した結果、手延べのひやむぎやうどんまでが一般的な商品生産になり、そうめん、ひやむぎ、うどんを製法から区別することが難しくなりました。

ちなみに、日本農林規格では、 「乾燥麺」を「小麦粉又はそば粉を原料として、これに食塩、水を加えて練り合わせた後、製麺し、
乾燥させた物(手延べそうめん類を除いて)」と定義した上で

「そうめん」・・乾麺類の中で、小麦粉を原料として作られた物で、 角棒状の物で、幅0.7mm以上1.2mm未満、厚さ1mm。丸棒状の物で直径0.8mm以上1.3mm未満。


「ひやむぎ」・・同じく小麦粉を原料として、角棒状の物で、 幅1.2mm以上1.7mm未満、厚さ1.0mm以上1.3mm未満。丸棒状の物で直径1.3mm以上1.7mm未満。と言う基準を設けております。
従って、伝統的な一部地方の手延べ、手打ち製品を除けば、
現在でまわっている
「そうめん・ひやむぎ・うどん」の違いは、規格上からは麺の太さだけと言うことになります。 一般にそばやうどんは、乾麺は生麺より味が落ちますが、そうめんは、はるかに美味しいと評価される傾向があります。これは乾燥させる事による蛋白成分の硬化が、のどごしの良さと言う食感にプラスに作用するためと言われています。 細いからこその好影響と考えられます。