トップ > 店主の独り言 > 2000年11月  第4話  師走の蕎麦行事のお話

hitorigoto_main.jpg

2000年11月  第4話  師走の蕎麦行事のお話

一覧へ戻る

秋の新蕎麦は、北海道の9月上旬をかわきりに、九州の11月下旬をもって収穫が終わり、12月一杯は新蕎麦として賞味されます。江戸はもちろん、農山村でも師走(12月)には、蕎麦を食べる行事が数多くあります。
今回、そのいくつかをご紹介いたしましょう。

 一日を東国では水神祭につながる「川浸りの朔日」、西国では一年最後の一日を祝い「乙子の朔日」と言う風習があり、いずれも餅をついて祝う。蕎麦がき餅、蕎麦焼き団子が用いられていたようです。
 
 八日は「事の日」であり、事納め・事始めの風習がある。津軽地方では古来より薬師講と言って、
一年中の医薬代をまとめて払う日に当たり、疾病から縁を切るという願いを込めて蕎麦切りを食す「薬師蕎麦」が生まれた。 十三日は「すす払い」。江戸時代から将軍から町人まで「すす払い蕎麦」を振る舞った。
江戸城中の大掃除は寛永年間以来十三日が決まりだが、幕末頃の徳川家大奥のすす払い蕎麦のしきたりは、
蕎麦は奥御殿それぞれの印の付いた椀に盛り、お替わりは蓋に入れ、薬味は一切出さないものと記されております。蕎麦は、御用達の万屋から、黒塗りの箱に入れ納められたそうである。
しかし、将軍の食べるものだけは、城内の御膳所で調進した蕎麦と、奥の御膳所で調味した汁であったそうです。 
十四日は、ご存じ赤穂浪士の「討ち入り蕎麦」。このお話は次号で詳しくいたします。
 
 二十二日は、冬至。この日はかぼちゃ、こんにゃくなど特定のものを食べ、柚子湯に入る習わしが全国に多い。
蕎麦を食べるのは、岡山県長船地方、福島県磐城地方等が有名である。
「冬至蕎麦」にふさわしい変わり蕎麦は、柚子切り蕎麦が筆頭であろうと思われます。
 
 三十一日、大晦日は「年越しそば」。
お蕎麦が一年中で最もたくさん出回る日となります。
通常、大晦日の夜食べ、新旧年を区切る食習慣として行われる年越しそばでありますが、
日本人古来の考え方では一日の始まりは夕方から始まるものとされており、
新年の行事が大晦日の夜から始まることと重ね合わせて考えると、
夜更けに食べる年越しそばは「朔日蕎麦」または「元旦蕎麦」であるとも言えます。