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2000年8月 第1話  新蕎麦のお話

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第1回という事と、8月という事で、
蕎麦の中で最も美味しいとされる新蕎麦のお話から始めようと思います。
「新蕎麦や 花と見し日も 昨日今日」「蕎麦の花 咲かぬうちから 言い合わせ」など、
新蕎麦を謳った詩は多く、新蕎麦を待ちこがれる江戸っ子の心理は昔から根強いものがございます。

国産蕎麦は大別して「夏蕎麦」「秋蕎麦」に分かれますが、一般的に新蕎麦と呼ばれるものは「秋蕎麦」のことで、南北に長い日本では北海道が一番早く8月下旬、段々と南下して九州では11月下旬に収穫されています。
6月前後に収穫される夏蕎麦は、早熟・初物として扱われます。
昔から蕎麦好きの人々に「秋新」と呼ばれた新蕎麦は、青みがかった色と上品な香りが特徴の素晴らしい蕎麦となります。この新蕎麦を売り出す時期によって、その蕎麦店がどこ産の蕎麦粉を使用しているかが判ります。
当店では毎年9月、今年も北海道ー沼田産からスタートする予定です。
「蕎麦は75日たつと旧に帰る」と言われるように、80日前後で栽培されます。
自然条件としては冷涼な気候が適していると言われており、「霧下」と呼ばれる朝・夕に霧の出るような環境がよい蕎麦を育てるとされています。しかし最大の敵は「霜」で降霜の時期を避けての種まきとなるため、各地の収穫時期の変化が出来ることとなります。

国内の代表的産地と収穫量は、第1位が北海道で35%、第2位が鹿児島で15%、第3位が茨城で5%、となっております。蕎麦粉の使用量のうち国産の占める割合は18%程度と少なく中国・アメリカ等の輸入蕎麦粉を使用する店が全蕎麦店の8割近くに登る現状は少し寂しい気がいたします。
3倍の価格差があるとは言え、国産は蕎麦の最も大切な要素である香りの点でやはり大変優れていると感じます。お蕎麦の風味の原点はやはり原料選びに負うところが大きく、今後もこの原料の選択には細心の注意を払っていく所存でございます。
この「店主の独り言」ではお蕎麦に関する面白い話を通して蕎麦をより身近なものと感じていただければと、
無学を省みず始めさせていただきました。ご意見・叱咤の程重ねてお願いいたします。