トップ > 店主の独り言 > 2005年5月 第58話  小麦粉へのこだわり

hitorigoto_main.jpg

2005年5月 第58話  小麦粉へのこだわり

一覧へ戻る

幼い頃より「割粉(わりこ)も蕎麦のうち」と教えられてきました。
割粉とはつなぎに使う小麦粉のことですが、蕎麦粉十割の生粉打ち蕎麦は別として、
二八そばでも2割の割粉を使用してお蕎麦を作ります。小麦粉もそば作りの重要な素材です。
小麦粉はその成分である「タンパク質」の含有量によって強力粉から薄力粉と言う種類に、「灰分」の含有量によって特等から三等という等級に分類される素材ですが、産地によってもそれぞれ特性があり自分の作りたい蕎麦に合うものを見つけるのに一苦労します。それほど種類が多いのが小麦粉です。

お蕎麦は蕎麦粉だけでも丹念に捏ねれば、十分麺になることは生粉打ち蕎麦をご覧になればお解りと思いますが、香りは申し分ないものの食感の点においてどうしてもべたつき、歯切れが悪くなります。
さらに蕎麦粉だけですと時間が経つと繋ぐ力が無くなってくる欠点も出て参ります。
そこでグルテンと言うガム状のタンパク質を成分に持つ小麦粉が必要になる訳です。
私の場合、蕎麦を繋ぐために使うのではなく、食感を整え、繋がっている時間を延ばすために使用するのが小麦粉であり、選定のポイントもおのずと食感に置くこととなります。

近年ゴツゴツ、ボキボキとしたお蕎麦がコシがあると勘違いされ、もてはやされていますが、
本物のお蕎麦は硬いものではありません。歯で切るのではなく唇で挟めば切れるものです。
その上蕎麦はつるつると飲み込むものですので、昔は蕎麦店に楊枝はなかったと聞きます。

さて話を戻して、この硬さは茹で方が足りないのと、ただ繋ぎたい為に繋ぐ力が強い硬質の外国産小麦粉を使うためと考えられます。「長さを持った麺の基礎は丹念な技術だ」と考えない蕎麦店に先はないのではないかと愚痴が出ます。

そんな意味も含めて、私の小麦粉選びのポイントは、
粘度は高いものの硬くならない、麩質の柔らかい小麦粉を見つけることでありました。
ざっと当たっても100を越える種類の小麦粉ですが、外国産の小麦粉は蕎麦粉同様価格は半値ですが、
硬いガラス質のタンパク質で駄目でした、北海道も駄目。硬いのです。
北海道以外の国産小麦粉は軟質というか蕎麦作りに適している気がいたします。
結局は茨城産の特等、軟質~中間質、中~準強力粉となった次第です。

一度コレと決めると品質は蕎麦粉に比べて安定しており、後は楽のように思われます。
国産小麦粉は若干ですが、黄色味と甘さがあります。
色はともかく、蕎麦の味自体が非常に弱いものなので、この甘さに個人的には少し不満であります、
皆様は如何お感じになりますでしょうか。
素材選び、こだわりは正に各店の独自性を出す戦略です。あらためてその大切さを感じる次第です。