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2007年10月 第86話  たぬきときつね

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少し前に「ざるともりの違い」を書いたところ、
先日大阪にある大学の文化サークルから「きつね」と「たぬき」に関するアンケートを頂きました。
関東と関西では「きつね」「たぬき」の内容が異なるようで、今回はこのお話について書いてみましょう。

「きつね」は油揚げを薄甘く煮て種とする物で、「たぬき」と並んで最も大衆的な種物です。
今日一般に「きつね」と言うと、大阪名物「きつねうどん」を連想するように、うどんを台(ベース)にした物が多くなっているが、台は蕎麦でも良いし、きしめんでも構わない。元々油揚げを種に使う蕎麦は、文献によると大阪より江戸の方が古いようで、文化3年(1806)刊、式亭三馬の洒落本「船頭深話」に、「菱屋の蕎麦は、葱に油揚げ等をあしらいたるものを・・・」と言う下りがある。
当時の「きつね」が蕎麦汁を使って薄甘く煮た油揚げを使ったかどうかは不明ではありますが、油揚げを使った種物であったことは確かなようである。

さて、蕎麦を台に油揚げを種にした物を「きつね」と呼ぶのは、関東とくに江戸・東京のことで、
きつねうどんが君臨する関西・大阪では、きつね蕎麦のことを「たぬき」と称し、区別しております。
また、京都ではきつねのあんかけを「たぬき」と呼ぶところもあると言うことです。
さらに、きつねそば、きつねうどんを「稲荷」と呼ぶ地方もあるそうです。 

一方、東京で言う「たぬきそば」は、天麩羅の揚げ玉を葱と共にかけそばの上に散らした種物であります。
「たぬき」の名前の由来は、その色合いやこってりした味からイメージされたという説や、
揚げ玉と葱以外に種らしい種が入っていないことから“種抜き”となり、それが転じて「たぬき」となったとする説などがあると言うことです。

関東では「たぬき」と言わずに「ハイカラ」とか「揚げ玉蕎麦」と呼んでいるところもあり、地方によっては、たぬきは化けるから連想した「お化け蕎麦」と言う変わった呼び方も見られます。
一体どこがその境かという疑問が生まれますが、各地においても混在しておりはっきりしていない様です。
「餅」や「醤油」のように関ヶ原辺りというのが、夢があって面白いように思えます。