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2017年8月 第136話 新そばの旬と期間

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新そばの事を「秋新」と呼ぶようにその季節は秋を指します。

秋の新そばの収穫は9月の北海道に始まり東北・信州・北関東・北陸・九州へと徐々に南下して参ります。

お蕎麦が一番多く食べられる季節は夏と暮れになっていますがこの夏の時期に新そばが間に合わないのは大変残念な事です、そこで初物好きな日本人は蕎麦の収穫時期を早める算段を繰り返し、気候的に条件のいい南の地方で春に種を蒔き夏に収穫する「夏新(夏の新そば)」の研究が進められてきました。

本年も7月下旬から当店で販売しております「沖縄県・宮古島産」はその一つで「日本一早い新そば」と銘打って7月に収穫して地域振興の旗頭としようとしております。3年前より扱った産地の蕎麦ですが独特の風味でなかなか評判は良かったと思っております。本年は北海道の早蒔きの夏新「雨竜産」を宮古島に続き販売予定です。

以前「蕎麦前線」と銘打って書かせて頂いた独り言の中でお話しました様に、秋の新そばの南下を年明けまで追いかけて参りました当店ですが、今年同様夏の新そばを使う事で一年の中で新そばを味わって頂くお蕎麦の「旬の期間」が飛躍的に長くなると考えております。今後も楽しみにして頂きたくお願い申し上げます。更にもう一つの可能性として未知の世界ですが、外国産も視野の一つに入れる時期が近づいてきているとも考えられます。日本のそば粉市場は国産を使用する我々の様な20%の店と外国産を使用する80%の店が住み分けをしています。

外国産は中国・アメリカでほぼ100%を占めますが在庫や輸入時期のずれで旬が分かりづらいようです。

ただここで話します「可能性」というのは南半球オーストラリアやニュージーランドでの生産の事なのです。

北半球の日本とは正反対の季節を持つことから、日本のそばの端境期である4月5月に収穫する蕎麦を作ることが可能という事で、20年以上前より日本のそばの種を持ち込み栽培が始まっているのです。当初は良いものも入ってきたのですが年々品質が低下しここの所扱いがありません。気候との適合と更なる栽培努力で丁寧な栽培がなされ質のよいそばを作ることができれば、将来的には面白い存在になる事を期待しているのです。ただ、一年の殆どを新そばの旬にすることや、初物好きの日本人の要望に応えてスイカが一年中食べられたりする事がいい事なのかどうかには多少の疑問符を抱きます。折角の四季のある国として季節を楽しみ、旬を味わう風情は持ち続けて行きたいと思う気持ちも強く残っております。